バンコクでお金をスラれる。

 

 

治安という面で日本よりいい国はほぼないので、タイは日本よりは治安が悪いと言えます。

 

だけれども基本的には治安がいいタイ。海外旅行は安心して行くことができる。

そんなタイで起こりやすいのは旅行者を狙ったスリなどの軽犯罪。

僕はスラれるやつはその人に問題があるからだと思っていました。俺は絶対にスラれない。気をつけるとこだけ気をつけていれば100パーセント大丈夫だと思っていました。

 

 

 

華の金曜日。

週最後の勤務を終えドミトリーに戻り、ビールでも買いにと宿の近くにあるコンビニへ。
あくまでもすぐ帰る予定だったのでポケットのないバスパンを着て、携帯と財布は裸で手に持って。
ビールを買って家に帰ろうとしたその時、何者かに話しかけられた。

バンコクであちら側から話しかけてくるのは基本的にナンパではなく、お金を目当てとした誘いであり僕もこれには警戒していてついていかないようにしていた。

しかし何か様子がおかしい。

 

「ごめんね、いきなり話しかけるのはクレイジーだって分かってる。でも全くゴーゴーバー嬢の勧誘みたいなものじゃないし安心してほしいのよ。」
「君日本人?初めまして!今から一緒にバーでもどう?もちろん全部奢るよ。」

流暢な英語で話しかけてきたのは、見た目若めのおそらくタイ人のカップルだった。

オフィスはこの近くにあるらしく、退屈だったので友達を探していたとのこと。

 

僕も最初はもちろん疑った。いきなり話しかけてきてそんな都合のいい話しがあるかと。

だが警戒したまま20分ほど話をしているとだんだん仲良くなってきて緊張も無くなってきた。その上、腹が減ったと言ったら本当に近くの屋台で焼き鳥を奢ってくれた。

「まあビール一杯飲んで10分位だけなら。その後すぐ帰るからね。」

「最高!よしとりあえずご飯食べに行こう!」

まあ一杯だけ飲んですぐ帰るか。と軽い気持ちで行ったのが悪夢の始まりだった。

 

 

近くの食堂へ行きさっそく乾杯。料理も出てくる。

さっきコンビニで買ったのが500MLとデカめの缶だったのか、意外にすぐ酔いが回ってきた。
相対して話も盛り上がってくる。

ふと気づいたら3杯位飲んでしまっていた時には、宿に帰るのが面倒くさいと思っている自分がいた。

凄く楽しい気分だった。気分は最高潮。華金バンザイ。

 

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気がついたらベッドの上にいた。朝だ。
一瞬夢かと思いフラフラする。まだ大分酒が残っている。

ケータイを確認する。普通にある。
財布を確認する。普通にある。
中身を確認する。まさかのない。

 

昨日のあいつらだ。

 

 

お金は両替したばかりで確か7000バーツほど入っていた。

7000バーツは現在のレートの日本円で約2万1000円。

 

 

夢か現実かわからずもう一回寝ようと試みたけれど寝れず、昨日の事を思い出す。
が、全く思い出せない。

酒で記憶をなくした事は一度もない自分だけれど、酒を3杯飲んだあたりから全く思い出せない。

そもそも宿の鍵すら持って行かずに外に出て行ったのに、なぜ入れているのだろう。

 

全てが謎だらけでよくわからずもう一度寝る。

3時頃起きてまさかと期待を持ってまた財布の中身を確かめる。もちろん無し。

とにかくなぜ鍵が無いのに宿に入れているのか不思議だ。すぐさまロビーへ行きオーナーに話を聞く。

「オマエ、大丈夫か?昨日すごかったぞ。」

「え?なになに?ごめんおじちゃん、俺全く思い出せないんだよ。もしかしてドア開けてくれた?」

「知らないおばさんがわざわざ電話でブザーを鳴らしてくれて、夜中2時頃ドアを開けたよ。それにしてもすごい酔っ払ってたな!監視カメラがあるから見てみるか?アハハハハ」

 

僕が昨日ビールを買いに家を出たのが9時頃だったのに、2時まであそこにいたのか・・

その知らないおばさんも全くだれか分からないので、とにかく監視カメラを見せてもらうことにした。

 

そこには見覚えのないおばさんが必死にブザーを押している姿と、今にも倒れそうな僕の姿があった。
宿のオーナーが眠たい中目をこすり、僕のためにドアを開けてくれていた。

ただひたすら謝り、反省した。

 

記憶をなくした事が一度もないのに今回が初めてというのも信じ難い。
可能性があるとすればトイレに行っている間に薬を盛られたかもしれない。それか今までにないくらい飲んだか。

どちらにせよ全て奢ると言っていたのに、物価の安いタイで一気に7000バーツも無くなるなどあり得ない。

確実にスリ。

 

 

せっかくの土曜日だったけれど気分が晴れずおとなしく宿に篭った。

 

 

 

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